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真性包茎とかんとん包茎の手術

真性包茎とかんとん包茎の区別は、実は相対的です。

多くの境界型の真性包茎だと、無理やり剥けば、かんとん包茎と言えなくもありません。
このタイプに共通するのは、わかりやすく説明すると、包皮のかなりの部分の周径が、陰茎の周径よりも狭いということです。
そして、包茎手術は余った包皮を切除するのですが、このタイプの場合は、この腹巻状の狭い部分(狭窄部)は絶対に切除しなければならないということです。
真性包茎、かんとん包茎の手術が、美しく仕上げるためには、仮性包茎に比べて一般的に難易度を増すのもこのためです。
(ちなみに、傷口である縫合ラインを亀頭直下ではなく、ペニスの中央付近に置く通常の泌尿器科での術式の場合は、さほど難易度は増しません。)
亀頭直下に縫合部を持ってくるには、余った包皮の幅がXcmだとすると、普通ならば切除する腹巻状の包皮は、上限が亀頭直下、下限は上限ラインからXcm下がったラインになるはずです。(細かなデザイン補正は無視してお話しています。)
この範囲の中に、先に述べた絶対に切除しなければならない狭窄部すべてが含まれていれば問題ありません。
ただ、通常この狭窄部は亀頭直下からかなり下がった位置に存在するので、狭窄部が広い場合だと、この範囲には入りきりません。

包茎手術するクリニック選びの重要性

未熟な医師の場合、亀頭直下に拘泥して、狭窄部を亀頭下に残したまま縫合するといったトラブルも見受けられます。このような場合は、多くの場合、再手術が必要になります。このようなケースでもなお縫合部を亀頭直下に設定するには高度の技術が必要になります。
仮性包茎でも、過大な広告に惑わされて結果的に想定外に高くつき、挙句また手術を受ける例は枚挙に暇がありませんが、真性包茎・かんとん包茎の場合は、術後の仕上がりの出来映え以前の問題があるので、誇大な広告や安い料金などを度外視した上での慎重なクリニック選びが必要になります。

包茎手術の流れ

包茎専門と称するチェーン系クリニックのようにクランプを使うところは論外として、ここではメスを使って美容外科医が包茎手術を執刀する場合の流れを説明することにします。もちろん、医師により微妙な差はありますが大きな流れは変わりません。

(1)まずは、切除範囲を決めるデザインを行います。

オーダーメードで洋服をする場合のデザイン、採寸に相当する部分で、仕上がりの出来栄えに決定的な影響を及ぼします。通常、10分~15分です。外科医の腕の見せ所なので、詳しいことは書けませんが、平常時のペニスと勃起時のペニスの状態を正確に見極めないと悲惨な結果に終わります。平常時と勃起時でかなりの差がでる人の場合など、優れた経験と技術をもって施術しないと、術後にすごく突っ張ったり、逆に手術をしたのに普段から皮が被りぎみになったりしてしまいます。外科医に限った話ではないかもしれませんが、そこそこ経験も積み手慣れて手術ができるようになったときに、技術の研鑽を止めてしまう人間がほとんどです。そうなると、何万例の経験を重ねても向上することはありません。クランプで何万例の症例をこなしても、百例の向上心ある執刀医に及ばないのも、また事実です。

(2)次に麻酔です。

バナナを例に説明しましょう。包皮はバナナの皮、陰茎がバナナの食べる部分である果実に相当することになります。そして、包茎手術はバナナの皮を切る手術で、果実は関係ありませんから、麻酔をするのも当然、ペニスの包皮だけということになります。軽く指先で包皮をつねった位の感覚しかありません。

(3)さて執刀です。

実は、もっとも手術的なイメージの部分ですが、ここは習熟した医師ならば、時間は10分もかかりません。仕立てだと生地の裁断に過ぎません。デザイン通りに裁断するだけです。ここで、十分に止血をしないと術後にボールのように腫れあがる血腫の原因になります。切除、剥離が雑だと止血が困難になります。

(4)〆の縫合です。

名医は、ここに一番時間をかけます。(時間がかかってしまうという方が適切かもしれません。)待合室が混み合い、手技も流れ作業化しているチェーン系クリニックの医師の大半は、この縫合を一般外科の粗さで終えてしまいます。すると包茎手術の傷跡が目立つことになるわけです。縫合が終わると、包帯でペニス全体をミイラ男のように巻き上げます。これで終了です。重度の包茎、複雑な症例でない限りは、1時間もかかりません。手術中も、慣れた医師であれば注意事項を話したり、会話しながら執刀しますので、患者としたら思っていたよりも、すぐに終わってしまう印象ではないでしょうか。

包茎手術の流れは、おおよそ以上に述べたような感じです。一期一会と言ったらなんですが、縁あって当院にいらした患者さまですから、私は最高の技術を提供するだけでは足りず、カウンセリングや手術中の会話を通じて、できる限りの相談、アドバイスを提供できればと心がけています。ただ余分な包皮を切るというだけなら別ですが、美しい仕上がりを実現するには、多くの技量が医師に要求されます。逆に、技量ある医師に任せてしまえば、術中はもちろん、術後についても、何ら不安を抱くこともなく安心して手術を任せられる、そのような手術と言えるでしょう。

包茎手術を受ける前に

包茎は小さい頃から皮を剥いておいた方が良いのか?

生まれた時は、みんな包茎です。

これが、将来的に剥けてくるか、包茎のままであるかは、遺伝要素のみではなく様々な生活習慣によると言えます。包茎であるとして、真性・かんとん・仮性のいずれのタイプになるかも同じです。見方を変えると、遺伝的要素は自分ではどうにもなりませんが、生活習慣を工夫することで包茎を予防・回避、または改善できるということです。正直なところ、思春期を過ぎてしまうと、包茎は手術以外には治りません。裾の長すぎるズボンは寸法直しをしない限りは、裾を引き摺ったままなのと同じです。今回は思春期までのケアを書いてみます。

幼児期から思春期にかけて行う包茎のケア

まずは、包茎になる決定的な時期である幼児期、学童期の指導です。そして、この時期は、まだ幼い本人に自助努力など期待できません。親が指導してあげる必要があります。最初は軽い癒着もありますから、お風呂場などで、ゆっくりと剥いてあげる、または、剥いてみるように促してみましょう。急がずに、シールを慎重にきれいに剥がすときのように、ゆっくりとやることが大切です。刺激の少ない石鹸で、お風呂に入ったら皮を剥いて、やさしく洗う。これを、習慣づけることです。そのうちに、なるべく普段も剥いておくように指導するとよいでしょう。被ったままの状態で放置する限り、自然に剥けることなどあり得ません。考えてみれば、当然ですね。

次に中学、高校の時期になると、積極的に剥く習慣をつけることが大切です。これまで剥いたことがない場合は、先の説明と同様のやり方で、お風呂場でゆっくり剥いてみることです。無理することはありません。また、1日で完全に剥ききることもありません。痛みがあるときは、途中まででよいのです。少しずつ、剥く範囲を広げていけば問題ありません。また、この時期では、包皮の先が十分に広がらず、亀頭の途中まで、あるいはまったく剥けないこともあります。これは、真性包茎、かんとん包茎であり、このような人は手術しない限りは絶対に剥けません。子供のタートルネック・セーターを大人が着ようとしても、そもそも頭が抜けないのと同じです。無理するとセーターの首の部分が裂けてしまいます。ペニスも同じです。この習慣を始めるのが早ければ早いほど、剥ける可能性が高まります。

思春期を過ぎた包茎の対処

では、最後に思春期をすぎてしまった人はどうするべきでしょうか。もちろん、このような習慣だけで包茎が治るということは期待できません。どうしても包茎を治したいのならば手術ということになります。ですが、真性包茎やかんとん包茎と異なり、仮性包茎では剥くこと自体は容易です。そして、包茎は治らないにしても、このような習慣を実践することで、衛生面での包茎の問題点の多くは解消されます。また、早漏などの悩みを回避するのにも有益です。

手術を受けるにせよ、受けないにせよ、まずは上で述べた習慣を是非とも実践することをお勧めします。